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獣医療における再生医療 -番外編-
《ヒト医療と獣医療における間葉系幹細胞療法》



理学博士 横関 健昭 


【再生医療の意義は?】

私たち人間もそうですし、ワンちゃんやネコちゃんも、ずっと元気でいることが一番です。

そうはいっても、生き物なのでので、どうしても病気やケガをすることがあります。病院で治療を受けると、ほとんどの場合は一般的な治療法(標準療法)で回復しますが、難病、重症、体調不良の場合などでは十分ではない場合やほとんど治らない場合もあります。標準医療にも限界があるので、いたしかたないのですが、これで諦めてしまうと、患者さんも、まわりの方も非常に辛いですね。

しかし、希望をなくさないでください。現代には再生医療があります。再生医療は、そのような厳しい状況の患者さんに対して、生活の質の向上、回復の増強、治癒といったように、患者さんの状態を少しでも向上させ、苦しみから解放させることを目的としています。


【間葉系幹細胞療法に関する社会的関心】 

皆様は、「間葉系幹細胞」って聞かれたことはありますか?ほとんどの方は御存知ないと思います。「間葉系幹細胞療法」はかなり新しい再生医療であることに加え、日本の再生医療と言えば何といっても「iPS細胞」なので、報道も偏っており、皆様が「間葉系幹細胞」を御存知なくても、それは致し方のないことです。

しかし、ここ1年ほど前から、さまざまな形で間葉系幹細胞がとりあげられるようになってきました。

国会の予算委員会(2013年2月19日):間葉系幹細胞を使って糖尿病でありますとか認知症、そこに対応できるんだ…すごい最先端の医療があるんだなということを勉強させていただいている

新聞(2013年3月10日):(間葉系)幹細胞で脳梗塞治療
新聞(2014年1月11日):脊髄損傷、(間葉系)幹細胞で治療
他にも新聞報道は多数あります。

NHK(Eテレ、サイエンスゼロ:2013年12月1日):天然の治療薬?脂肪に潜むスーパー細胞(脂肪幹細胞=間葉系幹細胞)。この細胞自身が薬になる。多くの病気に優秀な効果。




【間葉系幹細胞ってなに?】

このように、注目されてきている間葉系幹細胞ですが、それではいったいどのような細胞なのでしょう。

人間や動物の体には、生まれながらにして、組織を修復するための装置、すなわち「幹細胞」、が備わっています。幹細胞は組織のいろいろな細胞を作り出すモトとなる細胞のことです。幹細胞には役割分担によっていくつかの種類がありますが、間葉系幹細胞はそのひとつです。

この細胞は、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋肉の細胞、血管の細胞、その他にも肝臓の細胞や神経細胞など、非常に多くの細胞に分化できる能力があることが最近わかってきています。
そして、この細胞は全身に存在して、多くの組織の修復に活躍しています。




【間葉系幹細胞ってなに?】

そして、このような組織修復のスペシャリスト・間葉系幹細胞を用いた治療法が「間葉系幹細胞療法」になるわけです。

実施方法は非常に簡単(でも優秀)。まず、患者さんから組織を少しいただいて、間葉系幹細胞を培養して増やします(組織は骨髄、脂肪、臍帯などがよく用いられますが、脂肪には間葉系幹細胞が大量に含まれていることが最近わかってきたので、現在は脂肪がよく用いられています。脂肪から調製された間葉系幹細胞は特別に「脂肪幹細胞」と呼ばれることもあります)。そして、細胞が十分増えたら、剥離して、静脈点滴で患者さんに投与します(場合によっては局所注射)。

つまり、体を修復する間葉系幹細胞を特効薬として投与して、患者さんの病気を治す治療法です。
ただ、この方法は培養に時間がかかり、また、体調の悪い患者さんから手術をして組織を摘出しなければならないなど、患者さんの負担は大きいものがあります。

そこで最近では、患者さんを侵襲しないように、健常なドナーさんから間葉系幹細胞を予め調製して、凍結保存しておいたものを投与する方法が普及しています。実際に、そのような商品(細胞製剤)の開発が進んでいます。




【間葉系幹細胞療法が病気に効くメカニズム】

まず、静脈点滴で投与された間葉系幹細胞は、血中にのって体中をかけめぐり、その間に病変部位からでているSOSシグナル(具体的にはSDF-1という物質)を感知して、病変部位へ集積してきます。



次に、病変部位に集まってきた間葉系幹細胞は2つの方法で組織を治療します。
ひとつは間葉系幹細胞が分化して傷ついた組織を補充する本来の役割。もうひとつは、実はこちらの方が非常に効いていることがわかっているのですが、間葉系幹細胞が病変部位に多くの「命令物質」を分泌して病気を治療する役割です。

これらの命令物質には、①病気や損傷に伴う炎症を鎮静する、②弱った組織に対して、(②-1)病変部分に新しく血管を作って、栄養を供給してサポートする、(②-2)弱っている組織細胞に対して細胞の生存を強力にサポートする命令物質が作用し、細胞が死なないように維持する、(②-3)病変部位では組織が傷ついているので、周りの元気な細胞が細胞分裂(増殖)することで組織の欠損を埋める、などがあります。このようにして、病気を治します。


つまり、イメージとしては、大きな災害に対してレスキュー隊を派遣するイメージです。間葉系幹細胞療法もこれと重なるものがあります。


【間葉系幹細胞療法は多くの難病に優れた効果】

人間に対する治療結果から、間葉系幹細胞療法は多くの疾患に対して優れた効果があることが示されてきています。
下図は、そのような人間の疾患の一覧です。これらは主なものであり、他にも多くの病気で効果が示されています。自己免疫疾患、糖尿病、肝臓疾患、心臓疾患、神経疾患、重度の損傷などです。どれも難病と言われるものばかりです。つまり、従来、治療が難しいとされてきた疾患でも、素晴らしい治療効果が示されているわけです。治療成績の発表数は、ここ数年でうなぎ上りに増えています。

なので、今後、さらに多くの適応疾患が報告されると思われます。




【ヒト間葉系幹細胞療法の治療例】

全身性強皮症(自己免疫疾患):自己免疫によって自分の皮膚が攻撃され、硬直してしまう難しい病気です。間葉系幹細胞を投与すると、6ヶ月後には、自己免疫が改善され、皮膚状態も大きく改善しています。[Cell Stem Cell誌 10(5): 544-555(2012年)]

脳梗塞:発症すると非常に予後が厳しい疾患ですが、間葉系幹細胞を投与しなかった患者(通常の状態)は5年後には3人に1人しか生存していませんでした(生存者もほとんどが重い後遺症を患う)。しかし、発症後に間葉系幹細胞を投与すると、70%以上生存しています(後遺症も軽い)。[Stem Cells誌 28(6): 1099-1106(2010年)]

インスリン依存性糖尿病:間葉系幹細胞を投与した患者は、膵臓の機能が回復するので、1日に必要なインスリンの投与量を減薬できます。間葉系幹細胞を投与しない患者(通常の状態)は、病状が進行しますので、1日に必要なインスリンの投与量は増加します。[Endocrine Journal誌 60(3): 347-357(2013年)]

これらはほんの一例ですが、このように素晴らしい効果が示されてきています。


【私たちも間葉系幹細胞療法を受けられるのか?】

ハードルはありますが、受けられます。
可能性は2つあって、国の研究と民間医療です。

国の臨床研究では、患者さんの治療も行うのですが、医学の発展、将来的なの医薬品承認化、保険適用化のために貴重なデータをとらせていただくことを目的としています。当然、人員、施設、方法など、厳格に審査されて行われます。
しかし、特定の疾患、希望者からの選抜、募集人員の上限といったように、全ての病気に対して、また、全ての患者が受診できるようにはなっていません。ただし、貴重なデータをとらせていただくので、国(実施施設)が費用を全額負担してくれます。

民間の自由診療は、おもには○○クリニックといったような施設で行われています。
民間でも、難病に苦しむ患者さんに先進医療を提供することを目的としています。難病治療もありますが、近年では間葉系幹細胞が美容目的にも応用されてきています。

(現在は)医師の裁量で実施できるので、どのような疾患でも受診できますが、標準的な治療法ではないので全て自己責任で受けることになります。費用も患者側が全額負担となります(人間の間葉系幹細胞療法は非常に高額で、相場とすれば1回100-200万円とされています)。ほとんどの施設は万全の体制で実施されているとされていますが、一部においては、治療法の原理をよく理解しないまま、デタラメな治療していたり、海外のバイオベンチャーの手先となってただひたすら投与しているようなずさんな施設もあり、実際トラブルもおきており、問題視されています。

私たちも気をつけなければなりません。国も、そのようなずさんな施設を取り締まる方向に動いています。


【国内獣医療での間葉系幹細胞療法の状況】

ワンちゃんやネコちゃんも間葉系幹細胞療法を受診することができます。
ただ、非常に新しい治療法になるので、治療法の原理が獣医療に十分普及しておらず、受診できる動物病院は全国でも非常に少ないです。

おもなところとしては、我らがさくら動物病院があります。内科疾患に関する実績は、オーナー様方のご愛顧のおかげをもちまして、ダントツの日本一です。もうひとつ、大阪に岸上獣医科病院があります。こちらの岸上先生は脊髄損傷や骨折へ間葉系幹細胞を用いた治療法を開発した国内獣医療の重鎮です。当院の横山院長と岸上先生が獣医療・間葉系幹細胞療法のツートップとなります。

このように横山院長は内科疾患に対する獣医・間葉系幹細胞療法の第一人者ですので、「J-Vet」という獣医療のメジャー専門誌から間葉系幹細胞の理論や実施方法について国内獣医療界に対して解説してほしいと依頼され、現在、連載を行っています。ですので、近いうちに全国の動物病院で間葉系幹細胞療法が受診できる日がくるものと思われます。

このように、当院は間葉系幹細胞療法を十分理解したうえで実施しておりますので、信頼して受診していただければと思います。



イヌやネコの病気も人間と基本は同じですので、人間で示されている疾患に対して同様の効果が期待されます。実際、当院では自己免疫疾患や糖尿病など、多くの症例で優れた効果を発揮しています。

もちろん、大切な家族の一員のワンちゃん、ネコちゃんが大きな病気をしないのが一番ですが、万が一の場合には、間葉系幹細胞療法という最新の治療法があるということを思い出していただければと思います。  

当院は最高水準の獣医・間葉系幹細胞療法を準備し、難病に苦しむワンちゃん、ネコちゃんが癒されるように、努力していきます。



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