日常のケア  動物看護師 岡村 / トリマー 土屋

トリマーの役割とは・・・
 美 シャンプーカットにより美しさやかわいさを表現する
 健康維持 清潔さを保ち、健康状態を観測する
 異常発見 病気・ケア・寄生虫などをいち早く見つける

本来、万一犬・猫に何か異常があった場合の第一発見者は飼い主(オーナー)さんであるべきなのです。

一番身近な飼い主(オーナー)さんだから出来ること
日常の中でできる大切なケア

病気などの早期発見につながる


実際病院で行っているトリミングの流れに沿ってポイントを紹介します
最初に・・・
 トリミングにおいて、全ての作業は一つ一つがとても重要で理由があります。
 全ての作業は犬猫をしっかり安心・安定させて、押さえることがとても大事です。

作業は後ろ足から・・・
 思いやりの心を持って接する

 


1. 足裏バリカン

目的 ・・・ 足裏の毛で肉球が隠れ滑り止めの働きが出来なくなりフローリングなどで滑ったり足の踏ん張りがきかなくなる
関節を痛める(膝蓋骨脱臼、股関節脱臼、椎間板ヘルニア)
 特に長毛のダックスフンドは胴長短足のためより注意が必要です
 肉球の間が蒸れやすくなり皮膚炎を引き起こす
 

 
実際バリカンで足裏を刈っている動画



2. 爪切り

目的 ・・・ 爪は伸びると巻き込む性質を持つ

 指先の肉球に食い込み炎症が起こり歩行困難に
 爪が伸びるほど中の神経も伸びてくる

※ 最低でも月1回は切るようにしましょう!!

実際、肉球に食い込んだ爪の写真

注意
 ・散歩へあまり行かない運動不足の子
 ・爪を研がなくなった高齢の猫

爪の切り方



 ・一度に深く切らずに角度を変えながら
  爪のカドを少しずつ切る
  大根を切る時の面取りする感じで

 ・黒い爪の場合、爪の中心が透き通ってきたら
  ストップ
  (神経が見えにくいので途中からヤスリを
  使うのもポイント!!)
 
実際爪切りをしている動画

もし出血してしまったら・・・
市販されている止血パウダーを使うか、家庭にある片栗粉で止血します

 

ヤスリの目的
 爪の先を丸めることにより
 ・犬が体を痒くて掻いたとき傷つかない
 ・爪をどこかに引っかけてケガの原因にならない
 ・抱っこの時などにオーナーさんを引っかけない

最後に全部の手足を見て出血してないか、爪のカドが丸まっているかチェック!!


3. 耳掃除

耳掃除を始める前にチェック!
 ・よく耳を掻いている
 ・耳から黒い耳垢が出てくる
 ・耳の中が赤い
 ・腫れている
 ・臭う
 


耳毛抜きは慎重に!!
 ・痛みによるストレス
 ・毛を抜くことで耳への刺激に
  → 外耳炎を引き起こす
    可能性がある
 ・耳毛がある事で耳への
  水の進入を防ぐ


準備するもの
 ・水道水に湿らせたコットン
  もしくはイヤークリーナー
 ・乾いたコットンかティッシュ

※綿棒は耳の奥に入りすぎるため家庭では
避けてください

 

耳掃除
1. 耳の中がよく見えるように、耳を立てます
 

2. 湿らせたコットンを指に巻き、耳の中を優しく拭く
  ※奥に入るほど粘膜に近い状態で極端にデリケート 細心の注意力とやさしい扱いが大切



4. 肛門腺しぼり

肛門腺とは・・・
 ・肛門の脇にある臭腺
 ・肛門腺の中の分泌液の臭いで相手を確認
 ・便と一緒に排出される
 

サイン
 ・お尻を気にして、舐める
 ・自分の尾を追いかける
 ・お尻歩きをする (地面にこすりつける)

サインを無視すると肛門腺が破裂します!
 ・分泌液が上手く排出されず肛門嚢が破裂
 

溜まりやすいタイプ
 ・小型犬
 ・肥満
 ・高齢
 ・分泌物が泥状、ガム状
 

準備する物
 ・ティッシュ
 ・ぬるま湯で湿らせたコットンかガーゼ
 ・(動物用消臭スプレー)
 ・ビニール手袋
 

肛門腺絞り
 4時と8時の方向を押して下から上に絞り上げるようにする
 片手でしっぽを持ち上げると肛門嚢が突き出る形となるので絞りやすいです

肛門腺絞りの動画
シャンプー前に行うと
洗い流すことができます
 

注意
 ・肛門腺の分泌物が異常にすぐ溜まる
 ・異様な臭い
 ・膿のような物がある
       ↓
 悪性腫瘍の仕業かも?
 ※去勢手術などで治る可能性がある
 いつもと違うと感じたときは早めに病院に相談してください!!


5. ブラッシング

シャンプー前のブラッシングの目的
 ・毛玉やもつれを残したままシャンプーすると被毛一本一本の
  毛先から根元までを丁寧に洗うことが出来ないため
 ・毛玉があることで通気性が悪くなり皮膚病を引き起こす
 ・毛玉がある状態で濡らすと更に大きくなり取り除くのが
  困難になる
 ・シャンプー剤が皮膚に浸透しないため、シャンプーの意味が
  なくなる
 

スリッカーブラシの使い方
 5本の指でスリッカーを持つと力が入りすぎて皮膚を傷つけてしまう。
 写真のように3本指で軽く持つ
 (鉛筆を持つような感じで)
 優しく・軽く・手首を使って毛先から!
 


5. シャンプー
目的 ・・・ 肌や被毛の汚れを落とす
 フケや体臭を取り除き血行を促す
 新陳代謝を活発にし、新しい発毛へとつなげる
 犬種の持つ被毛の美しさや特徴を表現する

シャンプー剤の作り方
シャンプー剤は薄めて使いましょう
皮膚まで浸透して汚れが落ちやすくなる
アプリケーターや桶を使って薄める

■薄める割合
 シャンプー1 : ぬるま湯9
 

 ↑アプリケーター

※汚れの多い子は少し多めにシャンプー剤を入れる
※決して人間用の一般的なシャンプー剤を使用しないこと

人間用シャンプーと犬猫用シャンプーの違い
人間用   ・弱酸性
・頭皮の油分と汗を落とすために作られている
・刺激が強い
 
犬猫用   ・弱アルカリ性
・皮膚と毛に合わせて作られている
 人間の頭皮よりも刺激に弱い →人間用を使用してしまうと乾燥しフケが多くなってしまう

シャンプーを避けた方がよい時期
 ・子犬の駆虫時とワクチンなどの注射の直前と注射後2~3週間
 ・発熱時や便の調子の悪いとき
 ・発情期の雌で交配予定がある場合
 (臭い等消えてしまうため)
 ・妊娠犬(特に妊娠期間後半)
 ・老犬と病後犬(体調に合わせて短時間で終わらせる)

※精神的にも肉体的にも犬猫の負担にならないように行う

コンディショナーの目的
 ・毛の感触をなめらかにする
 ・もつれの原因にならない
 ・静電気を押さえる
 ・被毛の表面を保護する


ヒアレイン点眼液
シャンプーやブローによって減った眼の潤いを、ヒアルロン酸の点眼薬で補い、乾燥を防ぐ

 


シャンプー

1. まず、心臓から遠い後ろ足からお湯を掛ける  

2. 汚れを浮かせるためにも全身にムラなくお湯を浸透させる  

3. 毛の根元はお湯の通りが悪いので、手のひらで受けて軽くたたくように
注意:お湯の温度は36~37度
 皮膚病の子は31~32度
 熱すぎると皮膚の乾燥、刺激、痒みが誘発される。
 皮膚病の子は悪化する可能性があります

4. 耳と鼻にはお湯が入らないように注意
 (シャワーを嫌がる場合はスポンジや手を使ってお湯を掛ける)
 

5. 作っておいたシャンプー液を全身に掛ける
 (ゴシゴシともみ洗いすると毛が絡まり、もつれの原因になるので注意)
 

(指の腹を使ってやさしくマッサージするように)  

6. 足の指の間・耳の表裏・脇の下や肛門周囲など脂っぽくなっている箇所や汚れの強い部分は指先を使ってよく洗う

注意:皮膚病治療のために薬用シャンプーを使っている場合
皮膚の悪い場所から洗い始める
          ↓
薬用シャンプーをより長く皮膚の悪い部分に浸透させた方が皮膚炎に効果がある
※最低でも10分間は皮膚につけておく

7. 目の下の涙やけや口まわり、顔は毛先に向かって丁寧にもみ洗いする  

8. 顔は一番最後に洗い一番はじめに流す  

※シャンプーは汚れの程度にかかわらず2度洗いする!!

9. 体の水分を軽く手で絞る  

10. コンディショナーを耳と体にかけ、軽く手でなじませる  

11. 最後にコンディショナーを洗い流す  

12. 全身の余分な水分を手で絞っておきます  

注意:すすぎは念入りに
シャンプー剤が残ってしまうと、フケが異常に出たり皮膚炎を誘発する可能性がある
キュッキュというまで!!


タオルドライ
13. 軽くおさえる要領で水分をタオルに吸収させる
 


7. ブロー

全身をある程度乾かす
 

毛の長い子・短い子にかかわらず被毛をブラッシングしながらドライヤーで乾かすと仕上がりがふんわり!
 

注意:ドライヤーは30cm以上離して乾かす
近すぎると皮膚が熱くなり皮膚への刺激、痒みの原因になり皮膚炎を誘発する可能性がある
ポイント:最初は簡単に温風で乾かし、仕上げは冷風で

ドライヤーの熱さを手で確かめながら乾かそう  



耳拭き
シャンプー中に耳に入った水をコットンで軽く拭く
 

コーム
最後に全身を毛玉の取り残しがないか念入りにコームがけ
(コームもスリッカーと同じ3本の指で)
 


シャンプーの種類
 美容用シャンプー … 美容を目的
 薬用シャンプー … 皮膚トラブルの改善 / 薬を飲んだり塗り薬を塗るのと同じ感覚

薬用シャンプーの種類

1. 抗菌性シャンプー
細菌やマラセチア(酵母菌)の増殖を抑える事を目的とする
症状:皮膚がぶつぶつ、円形脱毛、赤み、痒み、べたつき、臭い
 

2. 角質溶解性シャンプー
過剰なフケや脂を減らすことを目的とする
症状:べたつき、フケ、カサブタ、肥厚
 

3. 保湿性シャンプー
保湿を目的とする
症状:かさつき、フケ、乾燥
 

4. 止痒性シャンプー
皮膚の炎症を抑え、痒みを減らすことを目的とする
症状:かゆみ、ひっかき傷、赤み
 

当院で使っている薬用シャンプー  

薬用シャンプーの注意点
1. 薬用シャンプーは薬なので選ぶ際は必ず獣医師と相談しましょう
  誤ったシャンプー剤を選んでしまうと、皮膚炎を悪化してしまう場合がある
2. シャンプーの後に保湿する
  シャンプー剤によってはシャンプーの後皮膚が乾燥しやすくなる
          ↓
  洗い流さないタイプの保湿性コンディショナーを用いて角質層の保湿・保護をする

当院で使っているコンディショナー  


薬用シャンプーに関するQ&A
1. シャンプー後フケが出る
A シャンプー後の多少のフケは正常
 シャンプー剤が合ってない
 すすぎ足りない
 シャンプーの後、乾燥してしまった

2. うまく家でシャンプーできない
興奮して嫌がる
A 無理せず病院、トリマーに相談を
 興奮した動物を長時間高温多湿のシャワー室でシャンプーするとかえって皮膚病の悪化を招く
 無理すると動物とオーナーとの関係が悪くなってしまう

3. シャンプーの後、赤みが出た
A 多少の赤みは血行が良くなるため問題ないが異常な赤さはシャンプー剤が合っていない
 シャンプー剤が皮膚に残ったままになっている
 皮膚をこすりすぎた

4. シャンプーの頻度
A 健康な皮膚 ・・・ 1ヶ月に1回~1回
 皮膚病 ・・・ 最低でも1週間に1回
 皮膚の状態によって回数も変わってくるため獣医師と相談しましょう
※回数が多すぎても皮膚バリアーが壊れて悪影響を及ぼす

ホームドクターは飼い主さん!
 ・毎日スキンシップする事で、小さな異変に気づくことが出来る
 ・病気の早期発見につながり早めの治療が可能となる
 ・動物とオーナーにとって日常ケアが楽しいものにしましょう!!





トリマー 土屋美和 
動物看護師 岡村華