■椎間板ヘルニア (ページ下部にムービーがあります)

椎間板ヘルニアは椎間板に変性が生じ、その内容物が脊柱管内に突出することにより脊髄を障害し、さまざまな神経症状をひきおこす疾病です。

【特徴】
犬における椎間板の変性には、軟骨様異形成と繊維様異形成の二つのタイプがあり、前者はダックスフンド、シーズー、ペキニーズ、ビーグルなどの犬種で若齢時から急速に進行することも多いです。後者は主にこれら以外の犬種で加齢に伴いしだいに病態が進行してきます。椎間板が突出した位置により、影響を受ける神経が異なり、脊髄圧迫の程度が重症度に影響を与えます。

【症状】
頚部椎間板ヘルニア症では頚部疼痛からはじまり、運動失調、麻痺が認められるようになり、重症になると自力で起き上がれなくなり、四肢の完全麻痺や自力による排便、排尿に困難がみられることもあります。胸部・腰部における椎間板ヘルニア症では腰背部疼痛、後肢の運動失調などが発現し、自力による排便、排尿が困難になることも多いです。脊髄軟化症を発症した場合は死にいたる大変重篤な疾病です。

椎間板ヘルニアに対する診断、治療法について詳しくご説明します

I 脊髄疾患の種類
椎間板ヘルニア様症状を示していてもヘルニアとは限りません。脊髄疾患には下記のように多くの疾患があります。痛みと進行性の様子である程度分類されます。

 
急性
慢性
 痛みあり
 椎間板疾患
環軸亜脱臼
椎間板脊椎炎
腫 瘍
脊髄空洞症
外 傷
 椎間板疾患
環軸亜脱臼
椎間板脊椎炎
腫 瘍
脊髄空洞症
 痛みなし
 虚血性脊髄障害
 先天性脊椎奇形
腫 瘍 

II 診断方法

1 症状(急性、慢性、痛みの有無)
2 犬種
3 年齢
4 血液検査、尿検査、レントゲン検査
5 脊髄造影レントゲン検査
6 MRI(大学病院に予約を入れます)

III 治療
クラスに応じて治療法を選択します。(クラスの詳細は別表参照)

クラス6~10  仮診断で治療を進めます   
2週間の十分な運動制限(たった5分の運動で最悪の事態になります)   
鎮痛剤、抗炎症剤、サプリメント   
↓   
2週間後改善無い、又は痛み・神経学的評価の増悪の場合は、
引き続き2週間治療   
↓   
その後の悪化は外科手術を検討
クラス2~5  入院による積極的な内科治療   

改善無い、増悪であれば脊髄造影又はMRIを実施し、外科手術の実施
クラス0~1  治療不能




IV 手術について

【術式】
背外側半側椎弓切除術、背側椎弓切除術、椎間孔天蓋切除術、 脊髄減圧術、脊椎造窓術のコンビネーション

複数の椎間板にアプローチする為、切開創が大きく時間のかかる 手術になります。

【手術の目標】
脊髄の障害を最小限に抑え、機能回復する可能性を最大限引き出す手段

術前・中・後はチーム医療により積極的に治療・看護を実施します。
手術の時点で不可逆的変化を起こしている脊髄は回復しません。脊髄軟化症が発症すると機能回復せず呼吸不全に陥り死に至ります。手術後は最低2~4週間以上の入院で完全な運動制限、排便・排尿の介助。

手術後は理学療法の実施…水中セラピー、マッサージ、歩行訓練  

術後の機能回復は早くて2~4週間、遅くて1年以上かかります。機能が戻らない場合は車椅子をオーダーしてQOLの向上に努めます。

【合併症】
脊髄軟化症による心肺呼吸不全、脊椎不安定症、別の部位の脊髄疾患による機能不全、感染症





V 脊髄軟化症について
死に至る脊髄疾患の末期的状況。
四肢の深部痛覚の消失から48時間以内または術後に発症します。  
椎間板疾患に関連した重度の神経学的不全を示す犬の3~6%に発症します。  
原因は椎間板物質の突出により脊髄動脈が圧迫され虚血性壊死を発症し脊髄が融解(溶ける)するからです。 
現在の獣医学では進行性の脊髄軟化症は治療法はありません。唯一の治療法は早期の外科手術のみです。

VI 脊髄造影について
麻酔、脊髄の刺激による脊髄疾患の悪化は無い。
まれに造影剤の刺激による発作。
脊髄造影では確実な疾患の場所判断が不可能。

VII MRIについて
確実に病態、病変部が確認でき最良の検査法。
麻酔リスクを除けば大変安全な方法。大学病院の検査となり予約が必要。
 


■椎間板手術後の経過