犬、猫などペットのがんは急速に増加しています。
日本獣医がん研究会によると「現在は犬の死亡原因の25%ががん、さらに10歳以上の犬だと50%を占めるまでになってきた」といい、がんの早期発見と治療が大きな課題である現状を語ります。その分私たち獣医師に求められている期待と責任は重大です。

動物のがんについての問題は、命と心の問題です。誕生から死まで、特に動物の場合は寿命が短いために、必ず家族が動物の死と向き合うことになります。大人も子供もこの命と向き合い、しっかり受け止めることが大切です。

また、動物は亡くなる時もお金では買えない「心」をプレゼントしてくれます。それだけに獣医師と家族は何をすべきか、何が出来るのか、命に対する心の本質が問われてきます。

当院の方針は、きちんとした診断をつけることです。よくある話ですが「小さいから様子見ましょう。」そして、大きくなってから病院にいったら「もう手遅れです。」
このようなケースは獣医医療ではまだまだ多いと思われます。

診断をつけるには、きちんとした病理専門医による病理組織検査が必要です。その他胸部・腹部レントゲンや超音波検査(エコー)、血球検査、血液生化学検査も必要になります。これらの検査は正確な予後判定、治療のプランには必要不可欠なものとなります。これらのデータを元に、標準的がん評価として人間と同じ「TNM分類、ステージ分類」をし、治療プラン ( 目標 ) を立てます。

■主な治療プラン
1 外科的な切除や化学療法などで根治を目標とする(ステージ I )
2 根治の確率はやや低くなるが、転移や増大を抑えることにより QOL を維持する(ステージ II ~III )
3 根治は不可能であるが、QOL を維持し、苦痛を軽減し、場合によっては安楽死も考える (ステージ IV )

つまり、肺に遠隔転移があるのに強引に手術を行い QOL を低下させ、限りある命を短くしてしまったり、ステージ I なのに積極的な治療をしないで進行を進めてしまうことは絶対にあってはならないことです。

しかし、積極的ながん治療を行うか否かの判断は、飼い主への十分なインフォームド・コンセント ( 十分な説明に基づく同意 ) がベースにあり、治療方法、寛解・根治率、治療期間、治療リスク、費用全てにおいてきちんと議論し納得していただいたうえでプランが決まります。また、治療経過を見ながら軌道修正をし、家族、動物それぞれにあったベストの治療法に近づけていくことが大切です。

これには十分な時間とお話が必要になります。私たちが伝えたい内容もありますが、何よりオーナーからその子についての歴史や愛する気持ち、悩みをお聞きしたいのです。治療法は決まっていることをどのようにするかの方法論だけです、一番大切なのは病気に向かう家族の気持ち、精神論だと思っています。家族全員が同じ方向に向いていることがその子にとって幸せなことなのではないでしょうか。

腫瘍科は大変時間がかかりますので、まず事前にご連絡をください。必要に応じて予約診療とさせていただくことがあります。また、ご家族の意見をきちんとお聞きしたいため、みなさんで来院することをお勧めします。