■人と動物の共通感染症

人間と動物に共通する感染症を人獣共通感染症(ズーノーシスzoonosis)と呼びます。人に感染する病原体は世界に1700種以上存在します。そのうち約840種が人と動物の感染症で、そのうち重要なものは160種です。寄生虫をはじめ、細菌、ウイルス、真菌、クラミジアなど原因は様々です。このうち私たちが動物と一緒に暮らす上でとくに問題となるものについていくつかお話します。感染症について正しい知識をもって動物と仲良く暮らしましょう。


1. 回虫症

【感染動物】 犬、猫
動物の糞便から排泄された回虫の卵が口を介して感染します。また、感染した家畜の肉を生食することで感染します。免疫力が弱い人や幼児などでは腸の中で孵化し、幼虫が全身に移動して発熱・視力低下・下痢・腹痛などを引き起こすことがあります。
※犬猫が感染した場合はほとんどが無症状です。

【予防法】
1. 犬猫と遊んだ後はよく手を洗いましょう
2. とくに子犬・子猫は動物病院で定期的に糞便検査を受けましょう。
心配なら症状がなくても駆虫薬を飲ませることができます。

左 : 回虫(成虫)

右 : 回虫の卵


2. 瓜実条虫症

【感染動物】 犬、猫

図 : 肛門周囲の片節
ノミ、シラミを媒介して感染しますので、瓜実条虫の卵を直接口にしても感染はしません。肛門周囲や糞便に名前の由来のとおり瓜の種に似た白色の片節(虫体の一部)が着くことが多いです。幼児に感染すると腹痛や下痢を起こすことがあります。
※犬猫が感染した場合はほとんどが無症状です。

【予防法】 ノミの駆除
月一回のフロントライン / 室内の掃除
(参考)ノミ症
ノミは人に刺咬症を起こすほか、動物に 貧血を起こしたり、アレルギー性皮膚炎猫ヘモバルトネラ症の原因になります。




3. 疥癬症

【感染動物】 犬、猫、ウサギ

主にヒゼンダニが原因です。人では免疫力が弱い人などが感染しやすく、強い痒みを伴います。動物でも皮膚にトンネルを掘るため同様に強い痒みを伴って激しく体を掻きます。

【予防法】 動物の疥癬の治療手洗い


4. トキソプラズマ症

【感染動物】 猫

猫の糞便や生肉から経口感染します。妊婦や免疫力が低下している人は注意が必要ですが、流産神経症状が起きる確率は低いです。成猫はほとんど無症状ですが、子猫は神経症状を示すことがあります。

【予防法】
1. 猫の糞便は適切に処理しましょう。
2. 生肉は食べない食べさせない
3. 妊娠前の検査(猫、人)


5. 皮膚糸状菌症

【感染動物】 犬、猫、ウサギ、ハムスターなど
白癬(はくせん)と呼ばれる真菌症の一種で、皮膚にカビが感染する病気です。免疫力が低下したり、皮膚抵抗力が落ちていると感染しやすくなります。 円形の黄白色ないし灰白色の紅斑、 脱毛斑が現れます。

左 : 皮膚糸状菌

右 : 人の皮膚症状

【予防法】
1. 感染した人、動物の病変部への接触に注意しましょう。
2. 飼育場所の掃除


6. バルトネラ症(猫ひっかき病)

【感染動物】 猫、(犬)

図 : 脇のリンパ節膨張
ネコに咬まれたり、引っかかれることで発症します。また、病原体を持つノミから感染することもあります。受傷した部分の丘疹、発熱、疼痛と、数週間から数ヶ月続くリンパ節の腫脹 があります。
※犬猫が感染した場合はほとんどが無症状です。

【予防法】
1. ひっかかれたり咬まれたりしないようにしましょう。
2. ノミの定期的な駆除・予防


7. パスツレラ症

【感染動物】 猫、(犬)、ウサギ
イヌの、ネコのほとんどが口腔内常在菌として病原体を保有しています。抵抗力の弱い人などが発症する「日和見感染」が多くみられます。皮膚の化膿症を起こすほか、呼吸器系の疾患骨髄炎や外耳炎などの局所感染症、敗血症や髄膜炎など全身感染症、さらには死亡例も確認されています。
※犬猫が感染した場合はほとんどが無症状です。

【予防法】
動物との口移しでエサを与えるなどの過剰なスキンシップを避けましょう。


8. Q熱(コクシエラ症)

【感染動物】 犬、猫、野生動物
80年代までは、日本には存在しないと考えられていましたが、現在ではその存在が確認され、患者の発生報告が年々増えています。感染した動物との生活のなかで感染したり、排泄物や分娩の際の胎盤などから病原体(細菌)を吸引し、感染することがあります。発熱倦怠感を起こし、長期の疲労感などに不定愁訴を示します。
※犬猫が感染した場合はほとんどが無症状です。

【予防法】
特別な予防法は存在しませんが、動物との過剰なスキンシップを避け、手をよく洗いましょう。


9. オウム病

【感染動物】 鳥類他
「トリ病」や「ハト病」とも言われ、主に感染した鳥の羽毛や鼻汁、乾燥して粉末状になった排泄物を吸い込んでしまうことで感染します。インフルエンザのような高熱をともなう激しい頭痛、全身の倦怠感、筋肉痛、関節痛、咳などの症状が表れます。

【予防法】
鳥カゴは常に清潔し、排泄物を吸わないよう工夫しましょう。



■これ以外によく知られる人獣共通感染症

(国内)
ブルセラ症、レプトスピラ症、ツツガムシ病、エキノコックス症、
日本脳炎、炭疽、O-157など

(海外)
狂犬病、マラリア、ペスト、黄熱、西ナイル熱、エボラ出血熱など


《よくある質問》   
Q : 猫エイズって人に伝染するの?   
A : いいえ、感染しません。動物の病気すべてが人に感染するわけでは ありません。

☆どの病気も正しい知識を持って動物と接すれば決して怖くありません。心配な場合は、獣医師や医師に相談してください!